2015.05.29 10:20
「覚える」という単語はヘブル語で「ザカール」で、これは①思い出す(出13:3)、②思う(ヨブ7:7)、③回想する(詩63:6)、④未来を見て思う(イザヤ47:7)、⑤注(留)意する、反芻するなどの意味を持っています。
「覚えよ」という御言葉は申命記に、計12回も出てきます。人間は「忘却の存在」であるため、歳月が流れ世代が変わってしまうと、どれほど大切な事であっても容易に忘れてしまうものです。ヨセフが夢を解き明かした給仕役の長が、まさにそうでした(創40:23)。
実際、イスラエルの民にとって過去の出来事は、覚えたくない恥の歴史でした。430年間、他国で奴隷の身となり(出12:40-41)、40年もの間、国もなく荒野で放浪していた過去でした。しかし神はイスラエルの民に対し、モーセを始め、様々な預言者をその時代ごとに立てて、「エジプトで奴隷であった事を忘れてはならない」と過去を覚えるよう、繰り返し語られました(出13:3, 14, 20:2, 申5:6, 15, 6:12, 7:8, 8:14, 13:5, 13:10, 15:15, 16:12, 24:18, 24:22, ヨシュア24:17, 士師6:8, エレ34:13, ミカ6:4)。エジプトでの430年間の苦難がどれほど過酷であったのか、聖書はそれを度々「あつい鉄の釜」や「燃える炉」に例えて語っています(申4:20,列上8:51,エレ11:4)。
また神は彼らに、神が導かれた荒野の道を覚えるようにと言われました(申8:2,9:7)。なぜなら、苦労した経験を容易に忘れる民は、「前にも増して大きな苦しみを背負わざるを得なくなるから」です。
神は民に「覚えよ」とだけ命じて、後は黙って傍観していたわけではありません。選民たちが「いにしえの日」を心に銘記出来るように、様々な記念物をお与えになりました。「覚え(ザカール)」から発生した名詞「ジカロン」は「記念物、思い出させること」を意味する言葉です。神は、「いにしえの日」が永遠に消えない記憶として残るようにイスラエルの民にあらゆる記念日と記念物をお与えになったのです。
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