テラの死とアブラハムの登場

2020.01.26 10:01

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テラ以後アブラハムが救済史の前面に出てくることになります。セムの系図は「誰がいつ誰を生み、何年を生きて男子と女子を生んだ」(11:10-26)という形で記録されています。創世記5章とは違って「生きて、死んだ」が省略してあります。ただテラに関しては「生きて、死んだ」と記録しながら、創世記11章ではテラの死を浮き立たせています。

 

創世記11:32 テラの年は205歳であった。テラはハランで死んだ。

 

 このようにして、創世記11章の系図はテラの死をもって終わりを告げています。神に逆らい、対抗するためにバベルの塔を建てた音も、そこでは聞こえません。ペレグとリウ、セルグとナホルなど信仰の子孫という人たちが見せてくれた物質主義の信仰の臭いもこれ以上放出することなく、テラの死と共に葬り去られました。そしてただ「アブラハム」一人に集中して記録されています。正統的な信仰系列であるセムの子孫さえも、世に染まり偶像崇拝の生活をしてきた暗闇の中で、神はアブラハム一人を探し出して、導き出したのです。

 バベルの塔の出来事以降、人間は罪の泥沼にはまり、神の救いの摂理が断ち切られるところでした。しかし、テラの死を最後にセム系列の闇の歴史を見事に終結させ、神はアブラハムを召し出すことによって、

新たな救いの御わざを遂行させたのです。

 セムの神(9:26)はエベルの神として(10:21)、そしてこれからはアブラハムに受け継がれようとしています。洪水以降、ハムの罪によって信仰の系列に暗雲が覆い始めました。しかし、「セムの神、主はほむべきかな」と言われた通り、セムの子孫の中でアブラハムが選ばれたことによって、全人類に救いの道が開かれたのです。

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