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 イエス・キリストの系図が新約の最初の章に記録されたのは、系図に記録された人物がすべて、人類の救い主であるメシアがこの地に来られるための救済史的経綸の通路であるためだ。イエス・キリストの系図は血統の正統性を明らかにするだけではなく、イエス・キリストが聖なる方としてこの地に来られるまで、信仰の系図を引き継いで来た信仰の先人たちの足跡が示されている。ここで一つ注目すべき点がある。通常、系図は血統の流れに沿って順序正しく記録されるのが普通であるが、マタイによる福音書1章の系図は、すべての代が抜けることなく連続的に記録されたものではないという事実である。むしろ、系図の間に多くの代が省略されているのだ。

1. エジプト430年の奴隷生活の期間から省略された代数
 ユダの子孫エスロン(ヘヅロン)は、エジプトに移住した際、ヤコブの70人の家族名簿にその名前が記録されている(創世記46:12)。エスロンはエジプト430年の奴隷生活の期間の前半部に存在していた人物である。また、アミナダブの息子ナアソン(ナション)は、エジプトを脱出した後の荒野時代にユダ部族のかしらとして登場する事から(民数記2:3,10:14)、彼がエジプトでの奴隷生活を経験した最後の世代であることを知ることができる。また、遊女ラハブは、カナンに入るB.C.1406年以後のカナン征服時代初期の人物であるので(ヨシュア2:1)、ラハブと結婚したサルモンは荒野で生まれた荒野2世代目の人物であり、彼の父ナアソンはエジプトで奴隷生活をしていた最後の世代であると見ることができる。
 ところが、エジプトで奴隷生活をしていた430年の中で、イエス・キリストの系図に登場する人物は、エスロン、アラム、アミナダブ、ナアソン(マタイ1:3-4)の、たった4代しか記録されていないのだ。実際、この時期に該当する世代数が、エフライムからヨシュアまでの10代であることを考慮すると(歴代上7:20-27)、イエス・キリストの系図にはエジプトでの奴隷生活430年の間に存在していた、多くの代数が省略されたということを知ることができる。

2. カナン定着後からダビデ王までの期間で省略された代数
 イスラエルの民がエジプトを出てカナンの地に入った時期がB.C.1406年であり、ダビデが歴史に登場したのはB.C.1010年だ。しかし、約396年という長い歳月の間、イエス・キリストの系図にはダビデを除いてサルモン、ボアズ、オベデ、エッサイ(マタイ1:5-6)の4代だけが記録されている。 
 私たちが知っている通り、サルモンとラハブはカナン征服時代初期の人物であり、ボアズとルツは士師時代末期の人物である(ルツ1:1, 4:13-17, 21-22)。すなわち、サルモンとボアズの間には約300年の空白があるのだ。士師時代の末期に生きていたエフタはギレアデが自分たちの地であると主張するアンモン王に対して「すでに300年前からイスラエルの地であるのに、今になって自分たちの地であると主張するのは不当である」と語った(士師記11:26)。私たちはここでカナン征服の指導者であるヨシュアと、その世代の人々が全員死んだ後、士師時代の霊的な暗黒期の人物ほとんどが、イエス・キリストの系図に記録されなかったという衝撃的な事実を知ることになる。
 神はマタイによる福音書1章の系図から士師時代の人物を削除することによって、士師時代の霊的な暗黒期に対する聖書の証言(ヨシュア24:31, 士師2:7-10)を立証されたのである。神に仕える信仰が消えてしまった時代、信仰のない時代はイエス・キリストの系図から外されてしまったのだ。

3. 南ユダの列王の統治期間から省略された代数
 イエス・キリストの系図には、ダビデからヨシヤまで14代が記録されているが(マタイ1:6-11)、歴代志上の系図と比較して見ると「ヨラム、アハジヤ、ヨアシ」の3代が抜けている(歴代上3:11-12)。これらはすべて北イスラエルの極悪な王アハブとその妻イゼベルの血統と関連のある王たちである(列王下8:26)。アハブとイゼベルの娘アタリヤは、メシアが来られる王の種族を完全に滅ぼし、神の救済史を途絶えさせようとした張本人であった(列王下11:1, 歴代下22:10)。アタリヤと関連のあった3人の王は、悪を行ったために系図から除かれたと考えられる(列王上21:21)。
 また、イエス・キリストの系図には、バビロンに移住する時を前後して「エホアハズ、エホヤキム、ゼデキヤ」の3代が抜けている(マタイ1:11-12, 歴代下36:1, 5, 11)。
 このようにマタイによる福音書1章のイエス・キリストの系図は、途中で多くの代が切れたり、繋がったりしているのを知ることができる。これらの事を通して私たちが悟るべき事は何か?それは、マタイによる福音書1章に記された系図が、イエス・キリストをアブラハムとダビデの子孫であると説明する事によって、彼がメシアであられることを証明するだけでなく、神との契約に忠実な者だけがイエス・キリストに繋げられているという事実を、明確に悟らなければならない。

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