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 創世記4章でも見られるように、カインの後裔たちは文明の開拓者でした。アダムの7代目レメクの3人の息子は牧畜業、音楽、機械文明等、各分野の創始者となりました。そして、ノアの3番目の息子ハムの孫ニムロデもまた、力ある狩猟者であり、世の権力者としてカインやレメクに次ぐ世の権力者となりました(創10:8-9)。


世の権力者ニムロデ
 創世記10章の中のニムロデに対する説明は、①世の権力者となった最初の人、②主の前に力ある狩猟者、③バベルの元祖、として記録されています。ハムの系図を順に紹介する中で、ニムロデに言及し、彼の事績を詳細に記録している事から、着目させたいという著者の意図が伝ってきます。

1. ニムロデは「世の権力者」でした。
 「世の権力者」とは、その「英雄または豪傑ですぐれた人物を言います。また大きな事を実現させる勇気と才能、知恵の優れたことを言います」と説いています。そうであるならばニムロデを指して、「世の権力者」と呼んでいるため、彼は神の御心とは関係ない世の権力者であり、神を敵対するのには大胆で、御心を妨げるには才能があり、もろもろの偽りで霊魂を奪い取るには知恵が卓越である者と言えます。
 「世の権力者」のヘブル語は「ギヴォル」で、この言葉は「暴力による統治者、暴君」を意味します。ニムロデは人々を圧制し、神に対抗するために自分の力を使う暴君であり、専制君主であったことが分かります。彼は暴力で部族らを占領し、人々を扇動してバベルの塔を建てることによって神に敵対したのです。

2. ニムロデは「力ある狩猟者」でした。
 これは彼の職業と神との関係を物語っています。「力ある」とは「強い狩人」という意味で、人よりはるかに卓越した力を持った狩猟者という意味です。ニムロデが居住していた地域は良い土地でありながらも野の獣が多くて、住む人々の安全や平和を脅かすことが絶えなかったでしょう(出23:29-30,申7:22)。ニムロデは野の獣を制圧し、人々の苦況を解決してくれた勇士として有名になったはずです。その後、彼に絶大的に追従する巨大な群れが起こり、彼は巨大な勢力(権力)を持つ「権力者」になっていきました。ますます増大する巨大な集団の力、その勢力でニムロデは自分を神格化し、ついには神の座にすわって神に敵対し、民を統治する力を示しました。こうしてニムロデは民の魂を盗み、神から離れさせる反キリスト的人物の表象になりました。

3. ニムロデはバベル建国の元祖となりました(創10:10,11:4)。
 力ある狩猟者ニムロデは民の指示を基盤にして、バベルを建国した元祖となりました。そして彼が建国したバベルはそもそも反神論的で、神の御心に敵対する国家でした。カイン系統同様、彼が建てた国家には神の御名は全く消滅し、人の名だけが高く上げられた所でした。彼はこのような自分の欲望を満たすために人々を動員してシナルの地の平地にバベルの塔を建てようとしたのです。



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